熱力学-05|内部エネルギー

熱力学第一法則の式に出てくる項の中から、今回は内部エネルギーを取り上げて見ていきます。

運動エネルギーや位置エネルギーなど、さまざまな名前のエネルギーがあります。

その中で内部エネルギーはどのようなものか、詳しく見ていきましょう。

内部エネルギーとは

閉じた箱の中に2つの分子が入っている系を考えます。

図1.箱の中の分子は運動エネルギーとポテンシャルエネルギーを生じる。


箱自体は静止しているとき、この系で生じるエネルギーは2種類あります。

1つは、2つの分子それぞれの運動エネルギーです。

箱の中で2つの分子が動くことによって運動エネルギーが生じます。

もう1つは、2つの分子の間に生じるポテンシャルエネルギーです。

2つの分子の間に引力や斥力など相互作用が働いているときは、2つの分子間の距離(位置)によって変化するポテンシャルエネルギーが生じます。

ポテンシャルエネルギーについては以前にも詳しく説明しました。

理想気体-3|分子間力を無視する

このように、考えている系(ここでは箱)が動いていなくても、その中に存在する分子によるエネルギーがあります。

これら運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和が内部エネルギーです。

内部エネルギー=運動エネルギー+ポテンシャルエネルギー\(\small\color{blue}{\cdots(1)}\)

系に \(\small 1\,\text{mol}\) の分子が入っていれば、\(\small 6\times10^{23}\) 個の分子の運動エネルギーと、それらの間に生じるすべてのポテンシャルエネルギーを足したものが内部エネルギーです。

多数の分子が存在するとき、ミクロな分子の視点から内部エネルギーを計算することは考えるまでもなく複雑そうです。

熱力学ではよりマクロな系全体の視点から、系に出入りする熱や仕事を通して内部エネルギーを考えます。

ちなみにここでは、分子の運動エネルギーについて \(\small x\)、\(\small y\)、\(\small z\) 軸の3次元方向の運動のみを考えていました。

これを並進運動と言います。

しかし厳密に言うと、並進運動のみを考えるのは単原子分子の場合だけです。

2原子分子以上になると、分子の回転や振動にともなうエネルギーもまた運動エネルギーとして考える必要があります。

ただここでは、分子の運動エネルギーと分子間のポテンシャルエネルギーが系に内部エネルギーもたらしていることを知っておいてもらえばよいです。

状態量とは

内部エネルギーは状態量です。

ここで状態量について説明しておきます。

系の現在の状態だけで決まる量を状態量(あるいは状態関数)と言います。

どのようにその状態を準備したかは関係ありません。

たとえば、大気圧下で \(\small 20\)\(℃\) の水が \(\small 1\,\text{mol}\) あったとします。

この水が氷を溶かして作られていても、水蒸気を凝縮して作られていても、その内部エネルギーは同じです。

この水 \(\small 1\,\text{mol}\) の内部エネルギーは、大気圧下、\(\small 20\)\(℃\) という現在の状態だけで決まっているわけです。

熱力学では状態量の考え方が大事です。

なぜなら、熱力学ではある状態から別の状態への変化にともなう熱力学量の変化量を計算することが多いからです。

この話はよく山登りで例えられます。

高さ \(\small 100\,\text{m}\) の地点 A から高さ \(\small 200\,\text{m}\) の地点 B まで、登り方によって歩く距離は違っても、登った高さが \(\small 100\,\text{m}\) なのは変わりません。

この高さに相当するのが内部エネルギーのような状態量です。

熱力学では状態量の変化量を計算し、その数値の大きさや符号を基に議論を行います。

物理化学で出てくる量は状態量が多いです。

状態量でないものの代表例は熱と仕事です。

ここで仕事を考えてみましょう。

仕事は (2) 式で与えられます。

\(\small\color{blue}{W=Fx\cdots(2)}\)

平面上の地点 A から地点 B まで物体を押して移動させるとき、近道を通るか遠回りするかで動かす距離 \(\small x\) は変わるので、たとえ同じ力 \(\small F\) で物体を動かしても仕事 \(\small W\) は変わってきます。

このように、経路によって変わってくる量は状態量ではありません。

熱力学第一法則は、状態量である内部エネルギーと、状態量でない仕事と熱を結びつけていることがわかります。

理想気体の内部エネルギー

ここまでで内部エネルギーの中身がわかりました。

さらに理解を深めるために、例として理想気体の内部エネルギーを考えてみましょう。

理想気体の分子は運動しているので、内部エネルギーに対する運動エネルギーの寄与はあります。

それではポテンシャルエネルギーの寄与はどうでしょうか。

ポテンシャルエネルギーは分子の位置によって決まるエネルギーです。

しかしそれは分子間に相互作用が働いている場合です。

理想気体では分子間に働く相互作用を無視しているので、分子がどの位置にあってもポテンシャルエネルギーは生じません。

したがって、理想気体がもつ内部エネルギーに寄与しているのは運動エネルギーのみです。

理想気体の内部エネルギー=運動エネルギー\(\small\color{blue}{\cdots(3)}\)

温度を変えると分子の速度が変わるので運動エネルギーが変化する、すなわち内部エネルギーが変化します。

逆にいうと、温度を変えなければ運動エネルギーは変化しません。

したがって、温度一定の条件で理想気体の体積を変えても、内部エネルギーの変化量は \(\small 0\) です。

ただし、理想気体でなければポテンシャルエネルギーが生じるため、温度一定の条件で体積を変えるとポテンシャルエネルギーの変化で内部エネルギーが変化することに注意が必要です。

この考え方は大事です。

覚えておいてもよいですが、内部エネルギーの中身をわかっていれば考えることもできます。

まとめ

今回は内部エネルギーについて説明しました。

細かいことはさておき、内部エネルギーは運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和で表わされることを知っておきましょう。

それにより、理想気体の内部エネルギーのような話がわかりやすくなります。

以上で熱力学第一法則に関わる熱、仕事および内部エネルギーの説明は終わりです。

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