前回、前々回と、表面に凹凸があると撥水性が強化されるという話を紹介しました。
濡れ-4|表面の凹凸が濡れ性を変える?
濡れ-5|身近にあった撥水(はっ水)表面
このことについて、計算を交えてもう少し具体的に説明します。
計算に使うのは Wenzel(ウェンゼル)の式です。
参考資料 (1)式
この式は、平らな表面と凹凸がある表面における液体の濡れ拡がり方の違いを表わすときに使われます。
ここで θ は平らな表面での接触角、θ’ は凹凸がある表面での接触角です。
接触角とは、固体の表面とその上に置いた液滴がつくる角度のことです。
参考資料 図1
そして r は凹凸がある表面が平らな表面に対してどれだけデコボコなのかを表わすパラメータで、(2)式で表わされます。
参考資料 (2)式
ここで重要なことは、平らな表面に細かな溝を掘って凹凸がある表面を作ったとき、凹凸がある表面の表面積は平らな表面の表面積よりも必ず大きくなるということです。
参考資料 図2
したがって r は必ず 1 より大きくなります。
以上をふまえて計算しましょう。
ある平らな表面を準備して、その上に水を置くと接触角は 120° だったとします。
つまりそのままでも水を弾く撥水性を示しています。
この同じ表面に溝を掘って凹凸をつけます。
そうすると表面積が大きくなるので、たとえば平らな表面の表面積が 10cm2 で、凹凸がある表面の表面積が 15cm2 だったとすると、r は 15/10=1.5 です。
この数値を Wenzel の式に代入します。
参考資料 (3)式
この計算からわかるように、同じ表面でも凹凸をつけただけで接触角は 120° から 139° へ変化します。
接触角が大きくなるということはより水を弾きやすくなるということなので、凹凸をつけることによってもともと撥水性を示していた表面がより撥水的になったと考えることができます。
いろいろなケースで計算してみるとわかりますが、θ が 90° より大きい場合は凹凸をつけることによって必ず接触角は大きくなります。
逆に θ が 90° より小さい場合は凹凸をつけることによって必ず接触角は小さくなります。
このことから、平らな表面に凹凸をつけることで、水を弾きやすい表面はより弾きやすくなり、水が濡れ拡がりやすい表面はより濡れ拡がりやすくなるという性質があることがわかります。