前回、固体面に置いた液滴の形は3つの界面張力のバランスで決まることを紹介しました。
界面張力は、界面の両側の物質(空気/水界面であれば空気と水)が決まれば1つの値に決まります。
したがって固体と液滴と空気の3つの組み合わせが決まれば、3つの界面張力はそれぞれ1つの値に決まるので、液滴の形も1つに決まることになります。
逆にどれか1つの界面張力を変えることができれば、液滴の形を変えることができるはずです。
このことについて、もう少し具体的に考えてみましょう。
ある固体の上に水滴が置いてある場合を考えます。
仮に、空気と固体の間の界面張力を 10、空気と水の間の界面張力を 5、そして水と固体の間の界面張力を 5 とします。
この場合、A 点を左に引っ張る力が少し強いと考えられ、水滴は図1のような形になるとします。
参考資料 図1
ここで水滴に洗剤を加えてみましょう。
洗剤を加えると、水滴が関わる界面張力が小さくなります。
簡単のため、空気と水の間の界面張力だけが影響を受けて、5 から 2 に変わったとします。
すると、上の図と比べて A 点を右に引っ張る力が弱くなってしまうため、水滴は図2のようにさらに拡がった形になります。
参考資料 図2
これが、第1回目の実験で示した、フライパンの上の2つの水滴の形がちがう理由です。
では固体の上に、空気と固体の間の界面張力が 5 になる物質を塗って、その上に水滴を置いてみます。
すると今度は上の図と比べて A 点を左に引っ張る力が弱くなってしまうため、水滴は図3のように丸まった形になります。
参考資料 図3
ここで塗った物質が、はっ水加工で使われるテフロンなどの物質にあたるわけです。
簡単のため、水と固体の間の界面張力は 5 のままとしていますが、テフロンを塗ると 5 より大きくなる効果があるので、A 点を右に引っ張る力がより強くなると考えられます。
以上のように、界面張力を中心に考えていくと、液滴の形がどのようになるか想像できることがわかります。
しかし、さらに液滴の形を左右するものがあります。
それについて、次回は紹介します。