熱力学

熱力学-01|熱力学とは

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化学の中の1つの分野である物理化学は物理と化学を足して2で割ったような内容ですが、とにかく数式を使って計算するイメージが強いです。

そんな物理化学も、さらにさまざまな内容に分かれています。

ここでは、その内容の中から「熱力学」に焦点を当てて、熱力学からわかることを学んでいきましょう。

物理化学の3つの柱

物理化学の教科書を見ると、大きく3つの内容に分けられています。

この3つが物理化学の中心をなす柱と思ってよいでしょう。

それでは3つの柱とは何でしょうか。

物理化学の教科書としてよく使われているアトキンスの教科書を見ると、次の3つに分けられています。

・Equilibrium(平衡)
・Structure(構造)
・Change(変化)

教科書によって表現は違いますが、およその分け方はこのとおりです。

Equilibrium(平衡)の内容は、これから説明しようと思っている熱力学の話が主体です。

熱や仕事のやりとりを通したエネルギー変化を取り扱っています。

気体や液体、固体など、分子が多数集まって構成されている巨視的(マクロ)な系の性質に注目することが特徴です。

これとは反対に、Structure(構造)は個々の原子や分子に着目する微視的(ミクロ)な系の性質を扱う内容で、量子化学とも呼ばれる分野の話です。

光の吸収に関係することから、赤外分光法などの分光学的な話につながります。

Change(変化)は反応速度論や化学動力学と言われる内容で、要は化学反応にともなう話です。

変化の速度について熱力学では議論できないので、化学の醍醐味である化学反応を物理化学の視点から見ていくときに大事な内容です。

これら物理化学を支える3本柱の1つである熱力学を、これからじっくり見ていきましょう。

熱力学の歴史

熱力学は読んで字のごとく、熱の力学です。

熱という漢字が入っているだけに、熱を主体に扱うことが想像されます。

熱力学が大きく発展したのは熱を多く使うようになってきた頃、つまり産業革命の頃です。

それまで水力や風力、あるいは人や動物の力を動力源としていたのが、蒸気を動力源として機械を動かすようになったのが産業革命の頃です。

熱を使って発生した蒸気が機械を動かす仕事をする。

そういう意味では、熱を仕事に変えていたようなものです。

そしてひとたび機械を動かせることがわかれば、その効率を上げたくなるのが人間の性というもの。

いかに効率よく仕事をさせるか、そのことを考えていく中で熱と仕事の関係を研究していって体系化されたのが熱力学です。

したがって熱力学は実用的な観点から原理原則が導かれてきたと言えます。

熱力学からわかること

私は熱力学について、状態変化にともなうエネルギー変化を計算して、その変化が起きるのか起こらないのか、あるいは変化を起こすためにはどうすればよいかを考えるための学問というイメージを持っています。

また結果として状態変化が行き着く先、つまり平衡状態を見極めることが目的だと考えています。

ここで言う「状態変化」は広く考えることができます。

変化といえば、まずは化学反応による変化が思い浮かぶでしょう。

固体の氷から液体の水に変わるのもまた状態の変化です。

もっというと、同じ液体でも \(\small 10\)\(℃\) の水が \(\small 15\)\(℃\) に変われば、それも状態の変化と言えます。

このようなさまざまな状態変化を、エネルギーという1つの尺度を使って考えていくのが熱力学です。

たとえば、水は \(\small 10\)\(℃\) であれば液体の水ですが、なぜ気体の水蒸気や固体の氷として存在できないのでしょうか。

こういうことも熱力学的に言うと、仮に \(\small 10\)\(℃\) で水、水蒸気、氷の状態を考えてエネルギーを計算したとき、水の状態がもっともエネルギーが低く安定な状態だから、という考え方になります。

そんなに難しく考えなくても、と思われるかもしれませんが、このような考え方をするのが熱力学と言えます。

ちなみに、エネルギーが低いほうが安定な状態という考え方は物理で学ぶ位置エネルギーの話と同じです。

つまり、地面を基準にして高さ \(\small h\) のところにある物体は \(\small mgh\) の位置エネルギーを持つので、より位置エネルギーが低い地面へ物体は移動する(落下する)という考え方です。

このように、自然現象はエネルギーが高いところから低いところへ向かって進むという考え方は大切です。

そして自然現象に逆らってエネルギーが低いところから高いところへ進むためには、手が仕事をして物体を持ち上げるなど、外からエネルギーを加える必要があるわけです。

このようなエネルギーを使った議論を理解するために、その基本となるエネルギーの計算方法を学ぶのが熱力学なのだと思います。

まとめ

これから熱力学を説明していくにあたり、まずはその概要について紹介しました。

とにかくエネルギーが関係してくると思ってもらえればよいです。

ではエネルギーとは何かという話になりますが、まずは熱や仕事などの単位が \(\small\text{J}\)(ジュール)で与えられる量全般と思っておけばよいでしょう。