内部エネルギー U、エンタルピー H、ヘルムホルツエネルギー A、ギブスエネルギー G の全微分式がわかると、その他の計算もできるようになります。
ここではマクスウェルの関係式を求めてみますが、その前に数学の考え方を見ておきましょう。
x と y で表わされる関数 z を考えます。
参考資料 (1)式
関数 z を x と y で偏微分するとき、どちらから先に偏微分しても答えは同じです。
参考資料 (2)式
ためしに(3)式を使って計算してみましょう。
参考資料 (3)式
(3)式を x と y で微分するとき、x から先に微分すると(4)式、y から先に微分すると(5)式となり、どちらも同じ答えを与えます。
参考資料 (4)式
参考資料 (5)式
この計算を内部エネルギー U に応用します。
内部エネルギー U の全微分は(6)式で表わされます。
参考資料 (6)式
(6)式から内部エネルギー U はエントロピー S と体積 V の関数であることがわかり、全微分の定義に従うと(7)式が得られます。
参考資料 (7)式
(6)式と(7)式を比較すると(8)式が得られます。
参考資料 (8)式
ここで内部エネルギー U をエントロピー S と体積 V で2回微分することを考えます。
このとき、エントロピー S から先に微分しても体積 V から先に微分しても答えは同じことを利用します。
参考資料 (9)式
(9)式がマクスウェルの関係式で、さまざまな熱力学量の間の関係を与えてくれます。
まったく同じ計算をエンタルピー H、ヘルムホルツエネルギー A、ギブスエネルギー G に適用します。
エンタルピー H の全微分は(10)式で表わされます。
参考資料 (10)式
(10)式からエンタルピー H はエントロピー S と圧力 P の関数であることがわかり、全微分の定義に従うと(11)式が得られます。
参考資料 (11)式
(10)式と(11)式を比較すると(12)式が得られます。
参考資料 (12)式
ここでエンタルピー H をエントロピー S と圧力 P で2回微分することを考えます。
このとき、エントロピー S から先に微分しても圧力 P から先に微分しても答えは同じことを利用します。
参考資料 (13)式
ヘルムホルツエネルギー A の全微分は(14)式で表わされます。
参考資料 (14)式
(14)式からヘルムホルツエネルギー A は温度 T と体積 V の関数であることがわかり、全微分の定義に従うと(15)式が得られます。
参考資料 (15)式
(14)式と(15)式を比較すると(16)式が得られます。
参考資料 (16)式
ここでヘルムホルツエネルギー A を温度 T と体積 V で2回微分することを考えます。
このとき、温度 T から先に微分しても体積 V から先に微分しても答えは同じことを利用します。
参考資料 (17)式
ギブスエネルギーの全微分は(18)式で表わされます。
参考資料 (18)式
(18)式からギブスエネルギー G は温度 T と圧力 P の関数であることがわかり、全微分の定義に従うと(19)式が得られます。
参考資料 (19)式
(18)式と(19)式を比較すると(20)式が得られます。
参考資料 (20)式
ここでギブスエネルギー G を温度 T と圧力 P で2回微分することを考えます。
このとき、温度 T から先に微分しても圧力 P から先に微分しても答えは同じことを利用します。
参考資料 (21)式
ここまで多くの式を示してきましたが、内部エネルギー U についての計算がわかっていれば、あとのエンタルピー H、ヘルムホルツエネルギー A、ギブスエネルギー G については同じことの繰り返しです。
式がたくさん出てくるとすごく大変なように見えますが、実はそんなに大したことをしていなかったりします。
計算に慣れてしまえば覚えなくてよくなるので、むしろ楽になります。
とはいえそこまで達するにはいくらか練習が必要なので、その前に嫌になってしまう人も多いのですけど…
そこは少し我慢して練習して慣れてしまいましょう。