全微分を考える前にもう一度、通常の微分に戻って考えるために(1)式を仮定します。
参考資料 (1)式
(1)式を x で微分すると(2)式が得られます。
参考資料 (2)式
(1)式の曲線、および(2)式から得られる傾き(たとえば x=6 のとき)の線は図1で表わされます。
参考資料 図1
ここで f(6) と f(10) を結ぶ直線の傾きを考えてみましょう
参考資料 図2
直線の傾きは x の増加分 Δx に対する y の増加分 Δy の比で与えられます。
参考資料 (3)式
もし f(6) での接線を傾きとして使うと図3のようになり、f(10) からずれてしまいます。
参考資料 図3
参考資料 (4)式
傾きのずれを δ で表わすと、(4)式で等号を成り立たせるためには(5)式とならなければいけません。
参考資料 (5)式
次に、ここまでの計算を f(6) と f(8) を結ぶ直線の傾きにあてはめてみます。
参考資料 図4
参考資料 (6)式
参考資料 (7)式
参考資料 (8)式
そうすると δ の値が小さくなったことがわかります。
これは f(6) での接線とのずれが小さくなったことを意味します。
さらに f(6) と f(6.5) を結ぶ直線の傾きにあてはめてみます。
参考資料 図5
参考資料 (9)式
参考資料 (10)式
参考資料 (11)式
ここまでくると傾きの差がかなり小さくなってきます。
このような計算を続けていくと、Δx を小さくすれば δ が小さくなることがわかります。
Δx をできるかぎり小さくすれば δ はほぼ 0 と考えることができ、この極限の状況がまさに微分の意味を表わしています。
これを一般的に表わすと(12)式のようになります。
参考資料 (12)式
そして Δx をかぎりなく 0 に近づけていくと δ は 0 に近づき、(12)式の 3 項目を 0 とみなすと(13)式が得られます。
参考資料 (13)式
(13)式は微分の定義と同じことを言っています。
以上が通常の微分の場合、あるいは偏微分の場合の考え方です。
この考え方を全微分に適用するとどうなるか、次回に考えていきましょう。