ここまで、微分の考え方とグラフの関係について見てきました。
今回は速度を用いた応用例を紹介します。
速度とは、単位時間あたりに進む距離のことです。\(\small 100\,\text{km}/\)時(\(\small =100\,\text{km/h}\))は時速 \(\small 100\,\text{km}\) のことで、\(\small 1\) 時間に \(\small 100\,\text{km}\) 進むことを意味します。
では \(\small 200\,\text{km}\) を \(\small 10\) 時間で進んだ場合の速度 \(\small v\) はどのように計算されますか?
それは\(\small\,(1)\,\)式のように計算されます。
\(\small\color{blue}{\displaystyle v=\frac{200\,\text{km}}{10\,\text{h}}=20\,\text{km/h}\cdots(1)}\)
したがって、\(\small 1\) 時間に \(\small 20\,\text{km}\) 進む、つまり時速 \(\small 20\,\text{km}\) です。
時速 \(\small 20\,\text{km}\) で \(\small x\) 時間進んだときの距離 \(\small y\,\text{[km]}\) は\(\small\,(2)\,\)式で表されます。
\(\small\color{blue}{y=20x\cdots(2)}\)
縦軸に \(\small y\)、横軸に \(\small x\) をとってグラフを描くと図1のとおりです。
このグラフの傾きは \(\small 20\,\text{km/h}\) であることから、グラフの傾きが速度を表しています。そして、グラフの傾きは微分で求めることができます。
\(\small\color{blue}{\displaystyle v=\frac{\text{d}y}{\text{d}x}=20\cdots(3)}\)
さて、上の例では速度が \(\small 20\,\text{km/h}\) でずっと一定と考えています。でもたとえば、止まっている車が動き始めると徐々に加速していくように、速度は時間とともに変わることが多いです。
このことについて考えるために、\(\small x\) 時間進んだときの距離 \(\small y\,\text{[km]}\) が\(\small\,(4)\,\)式で表されるとします。
\(\small\color{blue}{y=2x^2\cdots(4)}\)
グラフは図2のようになります。
グラフが変わっても傾きが速度を表すことに変わりはないので、微分をしましょう。
\(\small\color{blue}{\displaystyle v=\frac{\text{d}y}{\text{d}x}=4x\cdots(5)}\)
ここでは式の中に \(\small x\) が入っているので、時間とともに速度 \(\small v\) は変化します。
表1からわかるように、速度は時間とともに大きくなっています。
ここで加速度の出番です。
加速度は、単位時間あたりの速度変化のことです。距離を時間で微分すると速度がわかったように、速度を時間で微分すると加速度がわかります。
上の例では加速度 \(\small a\) は\(\small\,(6)\,\)式で計算されます。
\(\small\color{blue}{\displaystyle a=\frac{\text{d}v}{\text{d}x}=\frac{\text{d}^2y}{\text{d}x^2}=4\cdots(6)}\)
したがって、加速度は \(\small 4\,\text{km/h}^2\) で一定であることがわかります。このことはグラフを描けばすぐにわかります。
このように、微分は速度や加速度を求めるときに使うことができます。
他にも、たとえば球の面積と体積の関係がそうです。半径 \(\small r\) の球の面積 \(\small A\) と体積 \(\small V\) の公式はそれぞれ\(\small\,(7)\,\)式、\(\small(8)\,\)式です。
\(\small\color{blue}{A=4\pi r^2\cdots(7)}\)
\(\small\color{blue}{\displaystyle V=\frac{4}{3}\pi r^3\cdots(8)}\)
公式を並べてみて気づいたでしょうか。\(\small A\) と \(\small V\) は微分を介して\(\small\,(9)\,\)式の関係があります。
\(\small\color{blue}{\displaystyle A=\frac{\text{d}V}{\text{d}r}\cdots(9)}\)
さらに積分を組み合わせると関係がよりわかりやすくなりますが、その話はまたいずれすることにしましょう。