表面張力は面積を小さくしようとする力ということを知ったので、ためしに面積を計算してみましょう。
1 L(= 1,000 cm3)の水を例にして、いろいろな形をとったときの面積を計算してみます。
1)直方体(2 L のペットボトルのような形)
ペットボトルの底面は 10 cm × 8 cm ぐらいなので、1,000 cm3 の水を入れると高さは 12.5 cm になります(10 × 8 × 12.5 = 1,000)。
このとき面積が異なる四角形が3つできるので、その面積を足して2倍したものがこの直方体の面積です。
[(10 × 8) + (10 × 12.5) + (8 × 12.5)] × 2 = 610 cm2
2)立方体
1,000 cm3 の立方体は一辺の長さがすべて 10 cm なので、10 × 10 = 100 cm2 の面が6つできます。
100 × 6 = 600 cm2
直方体のときよりも面積が小さくなりました。
3)球
1 L の水が球になったときの面積を計算するためには、はじめに球の半径を知る必要があります。
以下に示す球の体積、面積の公式を使って計算しましょう。
球の体積 (4/3)πr3
球の面積 4πr2
まず、球の体積の公式から半径 r を求めます。
三乗根の計算があるので電卓を使ってください。
(4/3)πr3 = 1,000 cm3 ∴ r = 6.2 cm
この半径を球の面積の公式に代入します。
4π × (6.2 × 6.2) = 483 cm2
立方体に比べてかなり面積が小さくなりました。
4)2個の球
立方体よりも球のほうが面積は小さかったので、さらに半径の小さい球で計算してみます。
この場合、同じ半径の球が2個できるので、1個の球の面積を2倍する必要があります。
(4/3)πr3 = 500 cm3 ∴ r = 4.9 cm
[4π × (4.9 × 4.9)] × 2 = 603 cm2
1つの球の面積は小さくても、2つ合わせると全体の面積は球1つのときよりも大きくなりました。
5)10個の球
さらに小さい球を準備して計算してみます。
(4/3)πr3 = 100 cm3 ∴ r = 2.9 cm
[4π × (2.9 × 2.9)] × 10 = 1057 cm2
やっぱり面積は大きくなりました。
体積が同じでも形を小さくすることで、全体の面積は大きくなってしまうようです。
いろいろな形で面積を計算してみると、球がもっとも面積が小さくなることがわかります。
表面張力は面積が小さくなる方向にはたらくので、1 L の水があると自然に球の形になることが予想されます。
液体は容器に入っていないと形が保てないので確かめようがないと思われるかもしれませんが、1つ確かめる方法があります。
それは宇宙で水を浮かべる方法です。
宇宙船の中で液体が浮かんでいる様子を見たことがあると思いますが、あの液体のかたまりが丸くなっているのは、表面張力がはたらくお陰で面積がもっとも小さくなった結果と考えることができます。
ここまで、面積の計算をとおして表面張力の効果について見てきました。
次回は、コップの水がなかなかこぼれなかった理由や、洗剤を入れるとこぼれてしまった理由をまとめます。