理想気体-1|理想気体と実在気体の違い

物理化学の教科書で最初に出てくるのが理想気体と実在気体の話です。

そこでは状態方程式を学ぶことが一番の目的です。

しかしそれ以外にも、理想気体と実在気体の比較は物理化学の基本的な考え方につながる大事な話を含んでいます。

それは、実際に起きている現象を理解する上でシンプルなモデルを考えることの意義です。

いきなり難しい話になりそうですが、このことについて考えてみましょう。

実在気体と理想気体

実在気体とは、窒素や酸素、二酸化炭素など、実際に存在している気体のことです。

これらの実在気体が示す性質を知ることが物理化学の目的です。

ここでいう性質は、燃えやすいとか毒性があるとか、そういう意味ではありません。

たとえばガスボンベに気体を詰めたときの圧力がどうなるか、といった意味での性質です。

身近な気体(ガス)と言えば、家庭で使う都市ガスやプロパンガスがあります。

ガス導管を通して家庭に届く都市ガスにしても、容器に入れて家庭に届くプロパンガスにしても、安全のためにはガス導管や容器にどのくらい圧力がかかるのか知っておく必要があります。

しかし、もともと様々な要素が絡み合っているので、すべての要素をふまえて正確に実在気体の性質を取り扱うことはとても難しいです。

そこで細かいところは置いておいて、根本的に共通する気体の性質だけを抜き出してきます。

そして、それらの性質で表わされる気体が理想気体です。

理想気体はあくまで仮想的なものなので、もちろん正確に実在気体の性質を表わすことはできません。

それでも実在気体が示す性質の概要を知るのには十分に役立ちます。

私たちが生活している通常の環境であれば、実在気体を理想気体として扱っても大差ないとさえ言えます。

実在気体にあって理想気体にないもの

細かいところは置いておく、と上で書きましたが、実在気体では考慮しなければいけないけれど理想気体では無視しているものが2つあります。

1つ目は気体分子自体が持っている大きさ、2つ目は分子の間に働く分子間力です。

これら2つを考えるととたんに式が複雑になるので、理想気体では無視しています。

逆に言うと、これら2つの要素を理想気体に付け加えると実在気体の性質を表わせるようになります。

気体の種類によって異なる気体分子の大きさや分子間力を考慮することによって、より正確に実在気体の性質を表わせるようになるわけです。

2つの要素については次回に詳しく見ていきましょう。

単純化することの意義

正しく表わせる方法があるなら最初からそうすればいいのでは?と思われるかもしれません。

しかし複雑な要素を取り除いて単純化することのメリットがあるのです。

まずは全体の様子がわかることです。

木を見て森を見ず、というと少し意味合いが違うかもしれませんが、個々の気体の性質(木)に注目する前に気体そのものの性質(森)を知っておくことは理解の助けとなります。

また単純化して概要を知った上で要素を付け加えていくと、どの要素がどのような役割を果たしているのか、わかりやすくなります。

理想気体と実在気体の話で言えば、理想気体では気体が液体に変わることを説明できませんが、そこに分子間力という要素を加えると説明できるようになります。

そうすると、気体から液体への変化にとって分子間力が重要そうだということがわかります。

そうやって各要素の働きを明らかにし、実際の現象を理解していくわけです。

このような話は物理化学に限ったことではなく、科学全般で見られる考え方です。

そしてまた、条件によっては実在気体が理想気体のようにふるまうこともあります。

そういう意味では、理想気体は実在気体の近似あるいは極限と考えてもよいです。

まとめ

前置きが長くなりました。

ここで言いたかったことは、本来考慮すべき要素を取り除いて単純化されたとはいえ理想気体の理解を怠るなかれ、ということです。

そのあたりはこれからじっくり見ていきましょう。

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