前回の続きで変曲点について考えます。
\(\small(1)\,\)式の関数があったとします。
\(\small\color{blue}{y=x^3-6x^2+9x+10\cdots(1)}\)
この関数は図1のような曲線を描きます。
参考資料 図1
図1の曲線の極大および極小の位置を求めるためには、\(\small(1)\,\)式を微分した式を \(\small 0\) に等しいと置くことで計算できます。
\(\small\color{blue}{\displaystyle\frac{\text{d}y}{\text{d}x}=3x^2-12x+9=0}\)
\(\small\color{blue}{\Rightarrow 3(x-1)(x-3)=0}\)
\(\small\color{blue}{\Rightarrow x=1,3\cdots(2)}\)
図1を見るとわかるように、3次式の曲線は上に凸の曲線と下に凸の曲線が組み合わさった形となります。この形が入れ替わるところが変曲点です。
変曲点は関数を2回微分した式を \(\small 0\) と置くことによって求められます。
\(\small\color{blue}{\displaystyle\frac{\text{d}^2y}{\text{d}x^2}=6x-12=0}\)
\(\small\color{blue}{\Rightarrow x=2\cdots(3)}\)
したがって、\(\small x=2\) が変曲点であり、\(\small x<2\) では上に凸の曲線、\(\small x>2\) では下に凸の曲線が形成されます。ちなみに、2回微分した数値が負の場合は上に凸の曲線、正の場合は下に凸の曲線を与えます。
ファン・デル・ワールス状態方程式に戻ります。
臨界温度 \(\small T_c\) において臨界体積 \(\small V_c\) を与える2つ目の条件は変曲点であることです。実際に温度を変化させたときの変曲点の動きを図2の点線で示します。
参考資料 図2
変曲点は \(\small T_c\) で \(\small V_c\) に収束していく様子がわかります。
ファン・デル・ワールス状態方程式に変曲点の条件をあてはめて計算します。前回、極値の条件を求めるときに1回微分した式が得られているので、その式をもう1回微分します。
\(\small\color{blue}{\displaystyle\left(\frac{\partial^2 P}{\partial V^2}\right)_{T=T_c}=\frac{2nRT_c}{(V-nb)^3}-\frac{6an^2}{V^4}}\)
\(\small\color{blue}{\Rightarrow\displaystyle\frac{2nRT_c}{(V_c-nb)^3}-\frac{6an^2}{V_c^4}=0}\)
\(\small\color{blue}{\Rightarrow\displaystyle\frac{2nRT_c}{(V_c-nb)^3}=\frac{6an^2}{V_c^4}\cdots(4)}\)
こうして2つ目の条件式を求めることができました。この式と前回導出した式を組み合わせることで、臨界点を与える式を求めることができます。