前回、密度の定義を紹介しました。今回は密度の数値について、いくつか例を挙げてみます。
乾燥した空気の密度は \(\small 20\)\(℃\) で \(\small 0.001205\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\) です。これは \(\small 1\,\text{L}\)(\(\small =1,000\,\text{cm}^{3}\))で \(\small 1.205\,\text{g}\) なので、とても小さいことがわかります。
塩化ナトリウム \(\small\text{NaCl}\) の密度は、固体で \(\small 2.164\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\)(\(\small 20\)\(℃\))、液体で \(\small 1.491\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\)(\(\small 900\)\(℃\))です。密度は密な度合いなので、一般的に気体より液体、液体より固体のほうが密度は大きいです。
密度の大きい物質に水銀 \(\small\text{Hg}\) があります。水銀の密度は \(\small 20\)\(℃\) で \(\small 13.5461\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\) です。水の密度が \(\small 20\)\(℃\) で \(\small 0.9982\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\) なので、およそ 13 倍です。
学生の頃、水銀が入った瓶を持つ機会があったのですが、瓶を持ったときの違和感にとても驚いた記憶があります。水の感覚で持とうとすると、あまりにも重たくてギャップが大きいのです。仮にあのときの瓶の容量を \(\small 50\,\text{cm}^{3}\) とすると、水と水銀の重さは次のとおりです。
水の重さ
\(\small\color{blue}{0.9982\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\times50\,\text{cm}^{3}=49.910\,\text{g}}\)
水銀の重さ
\(\small\color{blue}{13.5461\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\times50\,\text{cm}^{3}=677.305\,\text{g}}\)
\(\small 50\,\text{g}\) の感覚で持ってみたら \(\small 670\,\text{g}\) もあるので、違和感があるのも当然です。
水銀を持つ機会はそんなにありませんので、身近に実感できる例として、1円玉と 10 円玉を持ってみましょう。簡単のため、1円玉はアルミニウム \(\small\text{Al}\) から、10 円玉は銅 \(\small\text{Cu}\) のみからできていると考えます。アルミニウムの密度は \(\small 20\)\(℃\) で \(\small 2.70\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\)、銅の密度は \(\small 20\)\(℃\) で \(\small 8.95\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\) です。
重さを計算するためには体積が必要なので、1円玉と 10 円玉の体積を計算しましょう。1円玉の半径は \(\small1\,\text{cm}\) で高さは \(\small 0.15\,\text{cm}\)、10 円玉の半径は \(\small 1.18\,\text{cm}\) で高さは \(\small 0.15\,\text{cm}\) なので、体積は次のように計算されます。
1円玉の体積
\(\small\color{blue}{3.14\times(1\,\text{cm})^{2}\times0.15\,\text{cm}=0.471\,\text{cm}^{3}}\)
10 円玉の体積
\(\small\color{blue}{3.14\times(1.18\,\text{cm})^{2}\times0.15\,\text{cm}=0.656\,\text{cm}^{3}}\)
したがって、1円玉と 10 円玉の1枚の重さは次のとおりです。
1円玉1枚の重さ
\(\small\color{blue}{2.70\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\times0.471\,\text{cm}^{3}=1.27\,\text{g}}\)
10 円玉1枚の重さ
\(\small\color{blue}{8.95\,\text{g}\,\text{cm}^{-3}\times0.656\,\text{cm}^{3}=5.87\,\text{g}}\)
1枚で \(\small 4\,\text{g}\) 違うので実感できると思いますが、体積の違いが気になる場合は、1円玉は7枚(体積は \(\small 0.471\,\text{cm}^{3}\times 7=3.30\,\text{cm}^{3}\))、10 円玉は5枚(体積は \(\small 0.656\,\text{cm}^{3}\times 5=3.28\,\text{cm}^{3}\))でほぼ同じ条件です。
1円玉7枚の重さ
\(\small\color{blue}{1.27\,\text{g}\times7=8.89\,\text{g}}\)
10 円玉5枚の重さ
\(\small\color{blue}{5.87\,\text{g}\times5=29.4\,\text{g}}\)
これだったら、手に持ったときに違いを感じることができるのではないでしょうか。
このように、密度はわりと身近なものです。次回はもっとも身近な氷と水の密度について考えます。