実在気体-1|実在気体の状態方程式

これまで理想気体の特徴を見てきたので、次に実在気体の特徴を見ていきましょう。

理想気体と比べて何が違うのか、そして実在気体の性質を表わすためにどのような工夫がなされているのか、に注目してください。

理想気体の弱点

気体の基本的な性質を知るには、理想気体について学ぶだけでも十分です。

私たちが生活している通常の環境下、つまり大気圧下では、気体を理想気体として扱ってもそれほど問題はありません。

しかし、圧力が高い環境下ではそうはいかなくなります。

身のまわりだと例えばガスボンベの内部がそうです。

実はここに理想気体の弱点があります。

理想気体で困るのは、圧力をかけたときの気体から液体への変化が説明できないことです。

理想気体の圧力-体積曲線で見たように、どれだけ圧力を高くしても理想気体は気体のままです。

しかし実在気体は圧力をかけると、どこかで液体に変わります。

カセットコンロに使うガスボンベの中身が液体であることは、ガスボンベを振ってみればわかります。

一方でカセットコンロで使用するときは液体ではなく気体(ガス)が出てきています。

これはガスボンベに実在気体を詰め込んで圧力をかけると液体に変わるからで、その液体から気化したガスだけを取り出して使用しているわけです。

もしガスボンベに気体のまま入っているのであれば、ガスボンベの体積分しかガスが入らず、使ったらすぐに無くなってしまうことでしょう。

なぜ理想気体が気体の液化を説明できないかというと、それは理想気体の仮定で分子間力を無視してしまっているからです。

分子はそれぞれ自由に熱運動していますが、それよりも分子間力が勝ると分子は自由に動けなくなり、分子同士が集まって液体に変化します。

理想気体のように分子間力を無視していると、体積が小さくなって分子間の距離が近づいてきても、分子は熱運動しているだけです。

逆にいうと、理想気体に分子間力の影響を入れれば、気体の液化が説明できるようになります。

理想気体から実在気体へ近づけることのイメージ

以前、理想気体と実在気体の違いを説明したときに、理想気体で無視していた分子の大きさと分子間力の要素を足すことによって実在気体に近づけていくという話をしました。

それぐらいの理解でかまわないのですが、ここで理想気体から実在気体に近づいていくときのイメージを少し説明してみます。

ここでは数学のグラフを使ってイメージを説明します。

あくまでイメージで、理論的に正しいとかそういう話は抜きにしています。

たとえば次の関数を考えてみましょう。

\(\small\color{blue}{y=x^{2}\cdots\text{(1)}}\)

(1) 式のグラフは図1で表わされます。

図1.(1) 式を表わすグラフ。

このグラフ上の傾きは (1) 式を微分して求められます。

\(\small\color{blue}{y’=2x\cdots\text{(2)}}\)

ここで \(\small x=1\) での接線を考えると、それは傾きが2の直線であり、図1上に描くと図2のようになります。

図2.x=1 での接線(点線)と (1) 式のグラフ(実線)で生じる差が、理想気体と実在気体のズレを表わすようなイメージ。


さてここで、この接線を使って (1) 式のグラフ上の点を表わすことはできるでしょうか。

たとえば \(\small x=2\) を考えると、接線上では座標(2、3)を与えますが、(1) 式で表わされるグラフ上では座標(2、4)を与えます。

したがって当然ではありますが、両者は一致しません。

一致させるためには、両者の差である1を接線が与える \(\small y\) 座標に足す必要があります。

ここでいう (1) 式によるグラフが実在気体を、接線が理想気体を表わしていると考えてください。

理想気体はいろいろな要素を削ぎ落として単純化したモデルであるので、完全には実在気体を表わすことができません。

およその特徴(図2でいうと右肩上がりの傾向)は同じであっても、どうしてもその特徴に差が生じてしまいます。

その差を埋めるために、削ぎ落とした要素を付け加えていくわけです。

繰り返しますが、この説明はあくまでイメージです。

ポイントは、生じた性質のずれを埋める工夫が必要であるということです。

その工夫の結果が、実在気体の状態方程式です。

実在気体の状態方程式の種類

実在気体の状態方程式は理想気体の状態方程式にどのように要素を付け加えていくかが重要です。

これについて、いろいろな取り組みが行われてきました。

教科書でよく取り扱われるのはファン・デル・ワールスの状態方程式です。

ファン・デル・ワールスの状態方程式は理想気体の状態方程式に分子の大きさと分子間力の影響を加えたもので、比較的わかりやすい式となっています。

そこで次回以降は、ファン・デル・ワールスの状態方程式を使って実在気体の性質を見ていきます。

他に実在気体を表わす式として、ビリアル方程式があります。

ビリアル方程式は数学の級数展開をしたような形をしています。

まとめ

ここでは実在気体の概要を説明しました。

次回以降、ファン・デル・ワールスの状態方程式を使って実在気体の性質を見ていきますが、分子の大きさと分子間力の影響を加えると描かれるグラフが変わってきて、それにより気体の液化が説明できるようになることを実感してもらいたいです。

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