前回は容量モル濃度を紹介しました。
今回はそれとよく似た単位である質量モル濃度を紹介します。
質量モル濃度は溶媒の重さが大事
重量モル濃度とも呼ばれる質量モル濃度の定義は溶媒 \(\small 1\,\text{kg}\) 中に含まれている物質のモル数で、単位は \(\small\text{mol}\,\text{kg}^{-1}\) です。
ここで、容量モル濃度との違いはわかるでしょうか?
容量モル濃度は「溶液 \(\small 1\,\text{L}\) 中」なのに対し、質量モル濃度は「溶媒 \(\small 1\,\text{kg}\) 中」となっています。
あまり大した違いではなさそうに見えて、実は大きな違いだったりします。
そのあたりは次回に触れるとして、まずは質量モル濃度を計算してみましょう。
質量モル濃度はこのように計算します
たとえば、\(\small 5\,\text{g}\) の塩化ナトリウム \(\small\text{NaCl}\)(式量 \(\small 58.44\))を \(\small 1\,\text{kg}\) の水に溶かして溶液を作ったとします。
この溶液に含まれる \(\small\text{NaCl}\) のモル数は次のとおりです。
\(\small\color{blue}{\displaystyle\frac{5\,\text{g}}{58.44\,\text{g}\,\text{mol}^{-1}}=0.086\,\text{mol}\cdots(1)}\)
したがって、作った溶液の質量モル濃度は \(\small 0.086\,\text{mol}\,\text{kg}^{-1}\) です。
前回も同じような計算をして数値は同じ結果になっているので、やっぱり違いはなさそうに見えますよね。
でも、この問題を前回の計算にあてはめるとしたら、今回作った溶液の体積は全体で \(\small 1\,\text{L}\) にはならないはずです。
水 \(\small 1\,\text{kg}\) がぴったり水 \(\small 1\,\text{L}\) にはならない上に、\(\small 5\,\text{g}\) の \(\small\text{NaCl}\) も入っているからです。
濃度が小さければ、ほぼ同じと考えても問題ない程度にはなりますが、そのあたりも含めて、次回に少し詳しく見てみましょう。
質量モル濃度を求める公式
さて、分子量(式量)\(\small M\) の物質 \(\small x\,\text{[g]}\) を \(\small z\,\text{[kg]}\) の溶媒に溶かして作った溶液の質量モル濃度 \(\small m\,\text{[mol}\,\text{kg}^{-1}]\) は次式から計算されます。
\(\small\color{blue}{\displaystyle m=\frac{x}{M}\times\frac{1}{z}\cdots(2)}\)
やはり式の形も容量モル濃度と同じです。
容量モル濃度と質量モル濃度の計算で注意することは、容量モル濃度は作った溶液の体積 \(\small y\,\text{[L]}\) を使うのに対して、質量モル濃度は溶媒の重さ \(\small z\,\text{[kg]}\) を使う点です。
ここさえ気をつけておけばモル数の計算は同じなので、この2つの濃度の計算もできるようになります。