今回は3つ目の濃度としてモル分率を紹介します。
モル分率は全物質量に対してある成分が占める物質量の割合のこと
モル分率は、含まれている全ての成分の合計物質量に対する、ある成分が占める物質量の割合のことです。
文章だとうまく説明できないので、さっそく計算してみましょう。
物質量の計算さえできれば、モル分率の計算は容量モル濃度や質量モル濃度の計算よりも簡単です。
モル分率はこのように計算します
水 \(\small 50\,\text{g}\) とエタノール \(\small 50\,\text{g}\) を混ぜた溶液における、それぞれのモル分率を求めます。
そのためにはまず、水(分子量 \(\small 18\))とエタノール(分子量 \(\small 46\))の物質量を計算します。
\(\small\color{blue}{\displaystyle n_{\text{water}}=\frac{50\,\text{g}}{18\,\text{g}\,\text{mol}^{-1}}=2.78\,\text{mol}\cdots(1)}\)
\(\small\color{blue}{\displaystyle n_{\text{ethanol}}=\frac{50\,\text{g}}{46\,\text{g}\,\text{mol}^{-1}}=1.09\,\text{mol}\cdots(2)}\)
水とエタノールを混ぜた \(\small 100\,\text{g}\) の液体の全物質量は \(\small 2.78+1.09=3.87\,\text{mol}\) です。
この \(\small 3.87\,\text{mol}\) に対して、水とエタノールの物質量はどれくらいの割合ですか、というのがモル分率です。
したがって、それぞれの物質量を \(\small 3.87\,\text{mol}\) で割ればよいです。
\(\small\color{blue}{\displaystyle x_{\text{water}}=\frac{2.78\,\text{mol}}{3.87\,\text{mol}}=0.72\cdots(3)}\)
\(\small\color{blue}{\displaystyle x_{\text{ethanol}}=\frac{1.09\,\text{mol}}{3.87\,\text{mol}}=0.28\cdots(4)}\)
計算は以上で終わりです。
いかがでしょうか。
計算はわりと簡単だと思います。
モル分率で注意する点
少し注意することがあるとすれば、モル分率は物質量の比であることです。
\(\small 50\,\text{g}\) と \(\small 50\,\text{g}\) という数値を見てしまうと、なんとなく \(\small 1:1\) だからモル分率は \(\small 0.5\) と考えてしまうかもしれませんが、そうではないので注意してください。
モル分率は比率なので、全成分のモル分率の合計は必ず \(\small 1\) です。
上の例だと \(\small 0.72+0.28=1\) となります。
したがって、成分が2つの場合は、1つの成分のモル分率がわかれば、あとは \(\small 1\) からそのモル分率を引くことで、もう1つの成分のモル分率がわかります。
モル分率には単位がありませんので注意してください。
成分が3つになっても4つになっても、同じように計算できます。
それぞれの成分の物質量を、全成分の合計物質量で割れば大丈夫です。
さらにモル分率を計算してみる
もう少しだけ計算してみます。
\(\small 1\,\text{mol}\,\text{kg}^{-1}\) の塩化ナトリウム水溶液があった場合、塩化ナトリウムと水のモル分率はどうなるでしょうか?
\(\small 1\,\text{mol}\,\text{kg}^{-1}\) の塩化ナトリウム水溶液の中には、\(\small 1\,\text{mol}\) の塩化ナトリウムと \(\small 1\,\text{kg}\) の水が入っています。
\(\small 1\,\text{kg}\)(\(\small =1,000\,\text{g}\))の水の物質量は \(\small 1,000/18=56\,\text{mol}\) なので、この塩化ナトリウム水溶液の合計物質量は \(\small 57\,\text{mol}\) です。
したがって、モル分率は以下のとおり計算できます。
\(\small\color{blue}{\displaystyle x_{\text{NaCl}}=\frac{1\,\text{mol}}{57\,\text{mol}}=0.02\cdots(5)}\)
\(\small\color{blue}{x_{\text{water}}=1-x_{\text{NaCl}}=1-0.02=0.98\cdots(6)}\)
モル分率を計算すると、それぞれの成分の割合がわかりやすくなります。
モル分率はあまり日常で使う濃度ではなく学問の分野で使うことが多いので、こういう濃度の表し方もあるんだな、ぐらいに考えてください。