濃度

濃度-09|規定度 normality

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

今回は4つ目の濃度である規定度を紹介します。

…とはいっても、実は私も規定度は苦手です。

最近はあまり使われなくなってきていますし、モル濃度で考えられればそれで大丈夫なので、簡単なところだけ説明します。

規定度を知るためにはグラム当量数から

規定度とは、溶液 \(\small 1\,\text{L}\) 中に含まれる物質のグラム当量数のことで、単位は規定、記号は \(\small\text{N}\) を使います。

グラム当量とは化合物の量を \(\small\text{mol}\) ではなく \(\small\text{g}\) で表したものです。

たとえば、塩酸 \(\small\text{HCl}\)(分子量 \(\small 36.46\))の \(\small 1\) グラム当量は \(\small 36.46\,\text{g}\)、水酸化ナトリウム \(\small\text{NaOH}\)(式量 \(\small 40.00\))の \(\small 1\) グラム当量は \(\small 40.00\,\text{g}\) です。

規定度がわかりにくいのはこのせい

これを見ると、\(\small 1\,\text{mol}\) の重さが \(\small 1\) グラム当量となっているだけで、何も難しくないように見えます。

しかし、硫酸 \(\small\text{H}_{2}\text{SO}_{4}\)(分子量 \(\small 98.08\))だと様子が変わってきます。

そもそも当量とは化学反応にかかわる物質の量(このあたりがわかりにくくて説明しにくいのです…)のことです。

化学反応にもいろいろありますが、硫酸だと中和反応が関係してきます。

硫酸には水素イオン \(\small\text{H}^{+}\) が2個入っているのに対し、水酸化ナトリウムには水酸化物イオン \(\small\text{OH}^{-}\) が1個しか入っていません。

したがって、硫酸と水酸化ナトリウムで中和反応するときは、硫酸に対して水酸化ナトリウムは2倍必要です。

逆に考えると、水酸化ナトリウムに対して硫酸は 1/2 倍でよいわけです。

この条件をふまえて、硫酸の \(\small 1\) グラム当量は次のように計算されます。

\(\small\color{blue}{\displaystyle\frac{98.08}{2}=49.04\,\text{g}\cdots(1)}\)

すると、硫酸 \(\small 1\,\text{mol}\) の重さ \(\small 98.08\,\text{g}\) は \(\small 2\) グラム当量になっていることがわかります。

ここが \(\small\text{mol}\) で考えるときとの大きな違いです。

規定度はどのように計算される?

\(\small 1\,\text{N}\) の塩酸とはどういう溶液でしょうか。

これは溶液 \(\small 1\,\text{L}\) 中に塩酸が \(\small 1\) グラム当量、すなわち \(\small 36.46\,\text{g}\) 含まれる溶液を表します。

塩酸 \(\small 36.46\,\text{g}\) は \(\small 1\,\text{mol}\) のことなので、\(\small 1\,\text{N}\) の塩酸 = \(\small 1\,\text{mol}\,\text{L}^{-1}\) の塩酸です。

水酸化ナトリウムについても同じ考え方ができます。

しかし、\(\small 1\,\text{N}\) の硫酸は違います。

硫酸の場合、溶液 \(\small 1\,\text{L}\) 中に硫酸が \(\small 1\) グラム当量、すなわち \(\small 49.04\,\text{g}\) 含まれる溶液を表します。

硫酸 \(\small 49.04\,\text{g}\) は \(\small 0.5\,\text{mol}\) のことなので、\(\small 1\,\text{N}\) の硫酸 = \(\small 0.5\,\text{mol}\,\text{L}^{-1}\) の硫酸となって、数値が変わってきます。

規定度が威力を発揮する場面

なぜこんな複雑なことをするのかというと、滴定の計算をするときに便利だからです。

規定度を使えば、化学反応式を考えなくてもすでに考慮されているので、滴定量を簡単に計算できます。

一方で、モル濃度を使うときは化学反応式をもとに ○:○ で反応するから、といったことを考えた上で滴定量を計算する必要があります。

ただ、最初に書いたように、最近はあまり規定度を使いませんし、モル濃度で統一して考えたほうがわかりやすいです。

ここでは、規定度とはこういうものです、という紹介にとどめておきます。